ブラック企業は、待遇や社内環境が劣悪で、従業員の心身に悪影響を与える恐れがあります。
ブラック企業のリスクを避けるためには、その性質を理解し、早めに見破ることが大切です。
ブラック企業の意味や定義、特徴をチェックしてみましょう。
ブラック企業とは
ブラック企業は怖い、避けた方がいいと言いますが、具体的にブラック企業とはどんなものなのでしょうか。
ブラック企業の意味や定義などを確認しましょう。
ブラック企業の意味
ブラック企業とは、雇用した従業員に対して劣悪な環境で働かせる会社のことを言います。
よくある事例は、上司が部下に過酷な労働をさせる、会社が従業員に労働の対価をきちんと支払わないなどです。
こうした環境での労働は、心身に重い負担を課し、時には過労死を引き起こすこともあります。
ブラック企業の基準
厚生労働省などで定めるブラック企業の明確な基準はありません。
しかし、労働者の権利や雇用のルールを定めた労働基準法などの法律に背いている場合には、ブラック企業と呼んでも良いでしょう。
ブラック企業の定義・特徴
ブラック企業に明確な定義はありません。
しかし、労働関連法規から、または一般的な見方から、ブラック企業には以下のような特徴があると考えられています。
違法な労働時間
労働時間は労働基準法で1日8時間、週40時間を超えてはいけないと定められています。
フレックスタイム制やみなし労働時間制などでも、この基準は変わりません。
この時間数を法定労働時間と言い、これを超えた労働時間を法定外労働時間と言います。
「36協定」を結ぶと、法定外労働時間にもいわゆる「残業」として働くことはできますが、その時間も月45時間・年360時間と定められています。
法律を無視して、これらの時間をオーバーして働かせようとする会社は、ブラック企業と言えるでしょう。
労働基準法第36条に基づく労使協定「36協定」を締結することで、会社は従業員に対して残業を依頼できるようになります。
不当な人事や解雇
本来、会社は雇用した従業員を勝手に辞めさせたり、反対に退職を引き留めたりすることはできません。
有期契約であっても、雇用契約期間の途中で無理に辞めさせることはできません。
それにもかかわらず会社の都合で不当に解雇したり退職を許さなかったりするのはブラック企業です。
労働者にとって理不尽な賃金形態
最低賃金を下回る賃金や一方的な給料の引き下げ、残業代を払わないなど、労働者に不利で会社に都合のいい賃金ルールもブラック企業の特徴です。
以下は、厚生労働省が発表している「令和3年度地域別最低賃金改定状況」です。
自分の会社の賃金が最低賃金を下回っていないか確認してみましょう。
都道府県名 | 最低賃金時間額【円】 | 発効年月日 | |
令和3年度 | 令和2年度 | ||
北海道 | 889 | (861) | 令和3年10月1日 |
青 森 | 822 | (793) | 令和3年10月6日 |
岩 手 | 821 | (793) | 令和3年10月2日 |
宮 城 | 853 | (825) | 令和3年10月1日 |
秋 田 | 822 | (792) | 令和3年10月1日 |
山 形 | 822 | (793) | 令和3年10月2日 |
福 島 | 828 | (800) | 令和3年10月1日 |
茨 城 | 879 | (851) | 令和3年10月1日 |
栃 木 | 882 | (854) | 令和3年10月1日 |
群 馬 | 865 | (837) | 令和3年10月2日 |
埼 玉 | 956 | (928) | 令和3年10月1日 |
千 葉 | 953 | (925) | 令和3年10月1日 |
東 京 | 1,041 | (1013) | 令和3年10月1日 |
神奈川 | 1,040 | (1012) | 令和3年10月1日 |
新 潟 | 859 | (831) | 令和3年10月1日 |
富 山 | 877 | (849) | 令和3年10月1日 |
石 川 | 861 | (833) | 令和3年10月7日 |
福 井 | 858 | (830) | 令和3年10月1日 |
山 梨 | 866 | (838) | 令和3年10月1日 |
長 野 | 877 | (849) | 令和3年10月1日 |
岐 阜 | 880 | (852) | 令和3年10月1日 |
静 岡 | 913 | (885) | 令和3年10月2日 |
愛 知 | 955 | (927) | 令和3年10月1日 |
三 重 | 902 | (874) | 令和3年10月1日 |
滋 賀 | 896 | (868) | 令和3年10月1日 |
京 都 | 937 | (909) | 令和3年10月1日 |
大 阪 | 992 | (964) | 令和3年10月1日 |
兵 庫 | 928 | (900) | 令和3年10月1日 |
奈 良 | 866 | (838) | 令和3年10月1日 |
和歌山 | 859 | (831) | 令和3年10月1日 |
鳥 取 | 821 | (792) | 令和3年10月6日 |
島 根 | 824 | (792) | 令和3年10月2日 |
岡 山 | 862 | (834) | 令和3年10月2日 |
広 島 | 899 | (871) | 令和3年10月1日 |
山 口 | 857 | (829) | 令和3年10月1日 |
徳 島 | 824 | (796) | 令和3年10月1日 |
香 川 | 848 | (820) | 令和3年10月1日 |
愛 媛 | 821 | (793) | 令和3年10月1日 |
高 知 | 820 | (792) | 令和3年10月2日 |
福 岡 | 870 | (842) | 令和3年10月1日 |
佐 賀 | 821 | (792) | 令和3年10月6日 |
長 崎 | 821 | (793) | 令和3年10月2日 |
熊 本 | 821 | (793) | 令和3年10月1日 |
大 分 | 822 | (792) | 令和3年10月6日 |
宮 崎 | 821 | (793) | 令和3年10月6日 |
鹿児島 | 821 | (793) | 令和3年10月2日 |
沖 縄 | 820 | (792) | 令和3年10月8日 |
全国加重平均額 | 930 | (902) | - |
地域差はありますが、時給で換算して700円台前半の場合には注意が必要です。
各種ハラスメントが横行
会社内のコンプライアンスの低下から、
- 従業員同士がなれ合いになる
- 上司が部下に対し礼儀をわきまえない態度を取る
- セクハラやパワハラが横行
などもブラック企業の特徴です。
相談部署などもなく、誰もおかしいと言えません。
心身のお疲れ具合チェックリスト
まずは自分自身がブラック企業に翻弄されて、疲れ切っていないか確認しておきましょう。
たとえブラック企業かどうか分からなくても、自分が大変すぎて心身が壊れそうなら、要注意です。
10項目のうち、3つ以上当てはまったら転職や休職を考えましょう。
また、目に見える不調は1つか2つでも、さらに以下で紹介する労働条件などのチェックリストにも当てはまったら要注意です。
疲労蓄積度チェックリスト
- 朝会社へ行くのが辛いと感じる
- 出勤の前の晩はゆううつ
- 仕事関連の心配事でよく眠れない
- 怒られたくないから働いている
- スマホが鳴ると会社からの連絡だと思う
- 将来のことを考えられない・考えたくない
- 自分はダメな人間だと思う
- もっとやる気を出さなければいけないと思う
- 仕事は辛いものであり、楽しいものではない
- 周りで怒られている人がいると自分のことのように身がすくむ
ブラック企業の特徴チェックリスト
ブラック企業の特徴をより具体的に確認できるチェックリストにしました。
上記の解説を見て「あれ?うちの会社ブラックかも?」と感じたら、下の項目をチェックしてみましょう。
労働条件や人事、社内環境など、ジャンルごとのリストです。
ブラック企業の待遇・賃金関連チェックリスト
ブラック企業は、給料の金額や制度そのものに問題があるケースが多く、法律を守っていないこともあります。
以下の項目は、一つでも当てはまったらアウトです。
給料・手当チェックリスト
- 給料が最低賃金より低い
- 給料や残業代の未払い
- 求人の内容と給与・待遇が違う
- 労働契約書や就労規則にはない給料の減額がある
- 労働契約書や就労規則がそもそも存在していない
- 不明確な給料からの天引きがある
- 業績や売上は上昇しているのに昇給がない
- 残業代が出ない・みなし残業で金額が低く固定
- サービス残業が多い
- 手当などの福利厚生がない
給料や手当が不当に出ない、出し渋られるのがブラック企業の特徴です。
会社や役員のいいように従業員が働かされ、労働力を安く買いたたかれています。
サービス残業は、なあなあでやらされることもあり、判断が難しいですが、本来ゼロであるはず。
にもかかわらず「多い」と感じるほどあったら完全にアウトです。
ブラック企業の労働時間に関するチェックリスト
ブラック企業では労働時間についても不当な扱いを受けることが多くなります。
労働時間に関するチェックリストも見てみましょう。
これも一つでも当てはまったらアウトです。
労働時間関連チェックリスト
- 残業時間が月に80時間を超える
- 労働時間が6時間を超えるのに休憩がない
- 休日が週に1回もらえない(4週間に4日休めなかったらアウト)
- 休日はあるけど休日返上で働かされる
- 休日なのに会社から連絡が頻繁に入る
- 休日なのに会社から急に呼び出される
- タイムカードがない
- タイムカード・勤務時間を上司が工作している
- 有給休暇を取らせない
- 有給休暇を取る社員に嫌味を言う
働きすぎの状態で、本来あるべき休憩や休暇がありません。(法律違反です)
従業員が休みたいと言っても、何かと適当な理由を付けられ、却下されます。
従業員は、付与された有給休暇を理由に関係なく使う権利があります。
ブラック企業の人事・雇用関連チェックリスト
人事・雇用・昇進関連でも不当な扱いを受けることが多くなります。
以下のようなことが一つでも明らかに行われている場合にはアウトです。
雇用・人事関連チェックリスト
- 名ばかり管理職にする
- 男女間の評価が不公平
- 社員研修制度がない
- 研修がスパルタで精神論しか語らない(役に立たない)
- 不当解雇が横行している
- 会社都合なのに自己都合退職に追い込まれる
- 退職したいのに退職させてくれない
- 不明確な雇用契約
「名ばかり管理職」とは、文字通り名前だけ管理職の地位を与えられることです。
実質はヒラ社員なのに、管理職になっているため残業代を出し渋られたり責任を押し付けられたりします。
また、入社後は辞めたくても絶対に辞めさせないくせに、用済みとなったら(不当解雇とならないために)自己都合で退職させようとします。
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退職の仕方がわかります。
ブラック企業の社内環境・風土チェックリスト
最後は社内環境のチェックをしましょう。
ブラック企業は社内環境も悪く、精神的に追い詰められます。
社内環境チェックリスト
- 過剰なノルマ
- 精神論・根性論
- パワハラ・セクハラの横行
- 社員を上司や経営者がプライベートな用事に使う
- 常識では考えられない独自ルールがある
- 上司が朝から酒臭い
- 外回りではないのに上司や先輩が頻繁に社内から消える
- 社内は怒鳴り声がいつも響いている
- 有給休暇の間、誰も仕事のフォローをしてくれない
- 応接室と社長室以外は常に社内が汚い
- 暴力を振るわれる
- 低いコンプライアンス意識
- うつ病やノイローゼで休んでいる社員がいる
- 社員旅行の参加は強制
- 下品な冗談やどつき(暴力)を「コミュニケーション」と呼ぶ
- セクハラ・パワハラの被害を訴える部署がない
- 危険な状況で作業させる
- 労災を申請させない
- 社員同士が口を利かない
- 社員の平均年齢がやたら若い
本来会社はルールに従って経営され、上司や部下もそれぞれがお互いの役割を尊重しながら働く場です。
しかし、ブラック企業ではスポコン漫画や昔の部活動のように体育会系のノリで感情論、精神論が中心、法律は無視です。
また、過剰な縦社会で、「上司はエライ!」「会社の言うことは絶対!」のように洗脳されます。
ブラック企業の求人・採用関連チェックリスト
ブラック企業は求人の段階でもおかしいことが多くなります。
雇用・人事関連チェックリスト
- 求人広告が年中ずっと掲載されている
- 社会保険はないと面接で知らされる
- 求人に乗っている給料が高すぎる(誇大広告)
- 面接で良い条件しか言わない
- 給料や待遇面について聞くとごまかされる
- 事業内容が求人広告から見えてこない
境遇のため、従業員が定着せず、大量採用を繰り返すのもブラック企業の特徴です。
ブラック企業の具体例・ブラックな職場とは
自分の勤めている会社がブラックではないか、と疑問や不安を抱えている人は多いものです。
ブラックな職場環境を訴える声を取り上げてみました。
事例1:有給休暇を取れない
有給5日消化義務について何も対策しない。そんなのバレないよと社長は言っているらしい。
有給取得の推奨は一切なく、申請すると嫌な顔をされたり、理由をさりげなく探りを入れてくるのでとれても年に1~2回。年1回もとらない人がほとんど。
引用:Yahoo! 知恵袋
事例2:出るはずの手当が出ない
面接時には賞与はあると言っていたが実は無かった 有給は一応取れる。 残業はたまに0時、もしくは次の日まである(支給0円)
引用:Yahoo! 知恵袋
日本はブラックな会社・悪徳企業が多い?
2012年から「ブラック企業大賞」という、日本の企業の中でブラック企業の頂点を決める企画が行われてきました。
労働組合役員やNPO法人の代表、弁護士や大学教授などで構成される「ブラック企業大賞企画委員会」が運営し、「大賞」という名で揶揄しつつ、働く環境を見直すきっかけづくりをしています。
2020年は行われませんでしたが、これまで「ワタミフードサービス」や「 電通」「三菱電機」など、世間を賑わせるような問題が発覚した企業が受賞しています。
この受賞企業はそうそうたる大企業ばかりですが、実際にはコンプライアンスの知識や意識の少ない中小企業などにもブラックな体質の会社は多いようです。
従業員(労働者)の力が弱いとブラックに
労働者と経営者ではお金をもらう側の労働者の立場が低くなりがちです。
従業員(労働者)側の力が弱いと、経営者が一方的に自分に有利な条件で働かせようとする土壌が育ちます。
特に日本では、会社に「奉仕する」「尽くす」といった意識を持つ人も多く、従業員が会社のために無理することも普通にありました。
こうした環境がブラック企業を育て、それに我慢する労働者を作ったと言っても過言ではありません。
ドライなゆとり世代・起業ブームが現状を打破?
近年、日本でもプライベートを優先し、ドライに就労する「ゆとり世代」の若者が増えています。
また、起業や副業ブームによって、一生会社に縛られる生き方を止める人も出てきました。
こうした動きは、これから先、従業員を精神的に縛り、忠誠や奉仕を強いるブラック企業を減らすきっかけになるかもしれません。
ブラック企業は労働者をむしばむ存在
ブラック企業は、違法な待遇や労働環境に労働者を縛り、労働力を搾取する存在です。
ブラックな環境で働く人は、徐々に心身を病み、やる気を失っていきます。
ブラック企業は入社すると辞めるのも大変になることがあるため、就職や転職では注意深く避けることが大切です。
ブラック企業を辞めたい人は退職代行を頼りましょう。