青色申告のメリットとデメリット、青色申告承認申請書の必要性について解説します。
青色申告にはよいことがたくさんあるけど、ちょっと面倒そうに見えるのが難点。
青色申告するかどうか、迷ったら、まずはこれを読んでから最適な行動を選んでください。
概略
- 青色申告にはメリットがいっぱいある
- 青色申告のデメリットは大したことがない
- 青色申告はできない人もいる
- 申請書だけ出しておけば、後で申告方法を自由に選べる
青色申告とは?
青色申告は、確定申告方法の一つです。
白色申告という方法もあり、確定申告の必要がある人は、どちらかのやり方を選んで申告します。
青色申告は、個人事業主など、事業を営む人を中心に行うことができる方法です。
青色申告ができるケース
青色申告するためには、以下のすべての条件に当てはまる必要があります。順を追って確認して、自分が青色申告できるかチェックしてみましょう。
事業所得・不動産所得・山林所得を得ている
所得の内容は、所得税法によって以下の10種類に区分されています。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
そのうち、事業所得・不動産所得・山林所得に当てはまる所得を稼いでいる人のみが青色申告を選べます。
開業届を提出している
開業届は、事業を開始した時に税務署に提出する届出です。
開業から1カ月以内に提出することになっていますが、罰則はなく、出さないでも事業はできます。
しかし、開業届を出さないと、「事業を営んでいる」ことを税務署にお知らせできず、次の青色申告承認申請書も出せません。
次の青色申告承認申請書のためにも、開業届は必須です。
青色申告承認申請書を提出している
青色申告をするためには、上記条件を満たしただけでなく、所定の申請書を事前に提出することも必要です。
申告の対象となる年の3月15日まで、もしくは事業開始から2カ月以内に所轄の税務署に、「所得税の青色申告承認申請書」を提出して初めて、青色申告を選べるようになります。
開業届を出しただけでは青色申告できないので注意が必要です。
↓↓開業届と青色申告承認申請書について、もっと詳しく!
簡易簿記もしくは複式簿記で記帳できる
青色申告で確定申告をするには、記帳の方法も問われます。
青色申告のためには、簡易簿記、もしくは複式簿記で記帳することが条件です。
白色申告では、こづかい帳や家計簿程度の記帳でも十分ですが、青色申告ではより精度が高く、詳しい情報がわかる簿記での記帳が必要とされています。
白色申告の初心者でもわかるやり方解説!確定申告に必要な書類や手続き方法とは
青色申告できないケース
青色申告は、所得の種類も定められていますし、タイミングによっては申請をしても青色申告できないこともあります。
事業所得と認められない
青色申告は、事業所得や不動産所得、山林所得だけの申告方法です。
特に副業で収入を得ている場合、仕事の内容や収入の安定性で事業所得と認められないことがあります。
副業の人も事業と認められれば青色申告を選べますが、難しいことも多いのが現実です。
副業で事業所得と認められない場合には、雑所得扱いとなることが多く、白色申告しか選べません。
また、副業の場合には、所得金額によって確定申告の必要がないこともあります。
不動産所得・山林所得と認められない
不動産所得は、アパートマンション、駐車場などの賃料が当てはまります。
ただし、土地や建物などの資産を譲渡した場合には、不動産所得ではなく譲渡所得です。
また、山林所得は山林を伐採してもしくは、立木のままで譲渡(つまり木を売る)した時の所得です。
ただし、山林を土地ごと譲渡した場合、土地代は、譲渡所得になります。
山林を取得してから5年以内に伐採や譲渡した場合には、事業所得になる(青色申告できる)場合もありますが、雑所得になることもあります。
取りやめ届出書を提出後1年経過していない
青色申告をしていた人が、取りやめ届出書を提出したら、その後1年間は基本的に再申請できません。
正式名称は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」です。
これは廃業時などに提出する書類ですが、今後、再度起業する予定がある場合には青色申告を継続しておくことをおすすめします。
青色申告のメリット
青色申告できる人は、できれば青色申告した方がいろいろなメリットがあり、より節税効果が得られます。
最高65万円の青色申告特別控除を受けられる
青色申告には、青色申告だけで受けられる特別控除があります。
青色申告特別控除は、最大65万円となっています。
平成30年度の税制改正で、青色申告特別控除額55万円(これまでと同じ)
さらにe-Tax による申告(電子申告)又は電子帳簿保存を行うと65万円
の控除が受けられることになりました。
青色事業専従者給与を経費にできる
青色申告の場合には、従業員として雇った家族に支払った給与を経費に算入できます。
白色申告の場合には、「専従者控除」として配偶者は86万円、その他の親族は50万円が経費にできます。
ところが、青色申告では「青色事業専従者給与」として全額経費処理が可能です。
白色申告よりも経費が増えて、節税効果が期待できそうです。
損失の相殺(通算・繰越し・繰戻し)ができる
青色申告では赤字だった場合にも、いくつかの方法で損失を相殺できるというメリットがあります。
一つめの相殺方法は、事業所得の赤字と他の所得との通算です。
二つめは、今年の損失を来年以降3年間、繰り越して利益と相殺する方法です。
さらに、過去にさかのぼって赤字を相殺し税金の還付を受ける「繰り戻し」という方法もあります。
30万円未満の減価償却資産が経費に
青色申告では30万円未満は全額一度に経費になります。
白色申告では10万円未満で、10万円以上の備品等を購入したら、耐用年数で減価償却しなければいけません。
貸倒引当金を計上できる
青色申告では、貸倒引当金繰入として経費に計上できる範囲が広くなります。
これによって経費を増やして節税できる幅が広がります。
青色申告のデメリット・注意点
青色申告はメリットと節税効果がいろいろありますが、デメリットは少なめです。
記帳方法・提出書類の作成が面倒
青色申告では、簡易簿記もしくは複式簿記で記帳することが必要です。
また、提出書類もやや多くなります。
そのため、準備が少し面倒だと感じることもあります。
しかし、上記のような節税効果も多く、多少の面倒で諦めるのはもったいないです。
青色申告できるくらいしっかり稼いでいるなら、確定申告ソフトを活用してでも青色申告することをおすすめします。
副業・フリーランスの青色申告がラクラク快適に?「弥生会計」のクラウド確定申告ソフトを紹介
事前の青色申告承認申請書の提出が必要
青色申告をしたい場合には、確定申告の約1年前までに「青色申告承認申請書」の提出が必須です。
一日でも出し遅れると、その年の青色申告はできなくなります。
また、家族の給料を経費処理するには、「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出も必要です。
とりあえず青色申告承認申請書だけは出しておこう
青色申告するためにはいくつかの条件が必要ですが、可能となればメリットの大きい方法です。
その資格があるのであれば是非、青色申告を選びましょう。
青色申告承認申請書を出しても、その年に青色申告する必要はなく、白色申告を選ぶこともできます。
しかし、申請書を出さないと、後から「青色申告したい」と思っても後の祭りです。
そのため、その年に青色申告をするか迷っている場合でも、とりあえず青色申告承認申請書だけは出しておくことをおすすめします。
(ただし、2年連続で青色申告しない場合には「青色申告取りやめ届出書」を出す必要があります)